政府が2028年度から導入を予定している電子渡航認証制度「JESTA(ジェスタ)」。短期滞在ビザ免除の外国人観光客から手数料を徴収する方針が報じられ、SNS上でも「観光客が減るのでは?」「おもてなしのイメージが崩れる」といった声が上がっています。
本記事では、JESTAの仕組みや手数料の詳細、そして本当に観光客減少につながるのかを、他国の事例と比較しながら詳しく解説します。
JESTAとは何か?正式名称と制度の概要
JESTAは「Japan Electronic System for Travel Authorization」の略称で、日本語では「日本版電子渡航認証制度」と呼ばれます。2025年5月23日、出入国在留管理庁が正式に発表しました。
この制度は、アメリカの「ESTA(エスタ)」をモデルにしたもので、短期滞在ビザを免除されている71カ国・地域からの渡航者を対象としています。対象国には、アメリカ、イギリス、オーストラリア、韓国、台湾、香港など、日本への観光客が多い主要国が含まれています。
JESTAで申請が必要な情報
申請者は渡航前にオンラインで以下の情報を提出する必要があります。
- 氏名・生年月日などの基本情報
- パスポート情報
- 職業
- 渡航目的
- 宿泊場所
- 過去の渡航歴
出入国在留管理庁がこれらの情報を確認し、問題がなければ渡航が認証される仕組みです。認証を受けていない場合、航空機や船への搭乗が拒否される可能性があります。
手数料はいくらになる?現時点での情報を整理
気になる手数料ですが、現時点で政府が検討しているのは2,000円〜3,000円程度とされています。ただし、これは正式決定ではなく、今後の国会審議を経て確定する予定です。
鈴木馨祐法務大臣は2025年5月23日の記者会見で、「出入国在留管理の厳格化、出入国審査の迅速化を実現できる」と制度導入の意義を説明しました。手数料の具体的な金額や徴収方法については「今後詰める」としています。
手数料の使途として検討されていること
政府関係者によると、徴収した手数料は以下の用途に充てることが検討されています。
- システムの運用・維持費用
- 外国人観光客への災害時支援
特に災害時支援については、日本が地震や台風などの自然災害が多い国であることから、観光客の安全を守るための資金として活用する構想があるようです。
なぜJESTAを導入するのか?3つの目的
JESTAの導入には、大きく分けて3つの目的があります。
1. テロ対策・安全保障の強化
現在の仕組みでは、航空会社から搭乗者情報を受け取るのは出発後です。つまり、不審な人物がいたとしても、日本に到着してから対応するしかありませんでした。
JESTAを導入することで、渡航前に情報を確認し、危険人物の入国を未然に防ぐことが可能になります。
2. 不法滞在・不法就労の防止
短期滞在ビザで入国した後、そのまま不法に滞在・就労するケースが問題となっています。事前審査により、こうしたリスクのある渡航者を入国前にスクリーニングすることができます。
3. 入国審査の迅速化
訪日客の急増に伴い、空港での入国審査の混雑・待ち時間の長さが課題になっています。
JESTAで事前に認証を受けた旅行者は、入国後に審査端末で顔写真と指紋を登録するだけで、自動ゲートを通って手続きを終えることが可能になります。これにより、入国審査にかかる時間が大幅に短縮される見込みです。
他国の類似制度との比較|日本の手数料は高い?安い?
「2,000円〜3,000円は高いのでは?」という声もありますが、世界各国の電子渡航認証制度と比較してみましょう。
各国の電子渡航認証制度の手数料一覧
| 国・地域 | 制度名 | 手数料 | 日本円換算(概算) | 有効期間 |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ | ESTA | 40ドル | 約6,000円 | 2年間 |
| イギリス | ETA | 16ポンド | 約3,200円 | 2年間 |
| EU(予定) | ETIAS | 20ユーロ | 約3,200円 | 3年間 |
| カナダ | eTA | 7カナダドル | 約800円 | 5年間 |
| オーストラリア | ETA | 20豪ドル | 約2,000円 | 1年間 |
| 日本(予定) | JESTA | 2,000〜3,000円 | — | 未定 |
※2025年12月時点の為替レートで概算。アメリカESTAは2025年9月30日に21ドルから40ドルに値上げされました。
この比較を見ると、日本のJESTAの手数料は国際的な水準と同程度であることがわかります。アメリカのESTAが約6,000円であることを考えると、むしろ安い部類に入ると言えるでしょう。
家族旅行の場合の負担は?具体的な計算例
とはいえ、手数料は1人あたりにかかるため、家族旅行の場合は人数分の費用が必要になります。
手数料シミュレーション
仮に手数料が3,000円の場合で計算してみましょう。
| 構成 | 人数 | 総額 |
|---|---|---|
| カップル | 2人 | 6,000円 |
| 家族(大人2人+子供2人) | 4人 | 12,000円 |
| 3世代旅行(6人) | 6人 | 18,000円 |
確かに、家族連れにとっては無視できない金額です。ただし、他国の制度では18歳未満や70歳以上を無料にしているケースもあります。日本でも同様の配慮がなされる可能性はあるでしょう。
本当に観光客は減るのか?データから読み解く
ここで本題の「観光客は減るのか?」という疑問について考えてみましょう。
2025年の訪日外国人観光客の動向
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年1月〜11月の累計訪日客数は3,906万5,600人に達し、すでに2024年の年間過去最高(3,687万人)を上回っています。2025年の年間訪日客数は4,000万人を超える見通しです。
円安を背景にインバウンド需要は旺盛で、韓国、中国、台湾、アメリカなど主要市場からの訪日客が堅調に推移しています。
他国でETA導入後に観光客は減ったのか?
アメリカのESTAは2009年に導入されましたが、その後も訪米観光客数は増加傾向を維持しています。イギリスのETAも2025年1月から全面義務化されましたが、大幅な観光客減少は報告されていません。
これらの事例から、電子渡航認証制度の導入=観光客減少とは直結しないことがわかります。
なぜ影響が限定的なのか
理由はいくつか考えられます。
- 手数料が旅行全体のコストに占める割合は小さい:日本への航空券代、宿泊費、食費などを考えると、数千円の手数料は全体の1%にも満たないケースがほとんどです。
- 日本の観光地としての魅力は健在:米国の旅行雑誌『Condé Nast Traveler』の調査では、日本は「世界で最も魅力的な国」に2年連続で選ばれています。
- 円安メリットが大きい:現在の円安水準では、多くの外国人旅行者にとって日本は「お得な旅行先」です。手数料の追加を上回るコストパフォーマンスがあります。
- 手続きがオンラインで完結する:従来のビザ申請のように大使館に出向く必要がなく、スマートフォンから数分で申請できる簡便さがあります。
「おもてなし」のイメージは崩れるのか?
「日本は無料で入国できるフレンドリーな国」というイメージが損なわれることを心配する声もあります。
しかし、考えてみてください。アメリカ、イギリス、EU、オーストラリア、カナダなど、世界の主要な観光先進国はすべて同様の制度を導入しています。これらの国が「おもてなしの心がない」と評価されているでしょうか?
むしろ、JESTAの導入によって以下のようなメリットが期待できます。
旅行者にとってのメリット
- 入国審査の待ち時間短縮:ピーク時に1時間以上かかることもある入国審査が大幅に短縮される見込みです
- 災害時のサポート体制強化:手数料が災害時支援に使われれば、万が一の際の安心感につながります
- オンラインで事前完結:空港到着後の書類記入が不要になり、スムーズに観光を開始できます
日本にとってのメリット
- 安全・安心な観光地としての評価向上:テロ対策や不法滞在防止の取り組みは、むしろ観光地としての信頼性を高めます
- オーバーツーリズム対策の一環:入国者情報を事前に把握することで、地域ごとの観光客数の予測・分散が可能になります
2028年度の導入に向けた今後のスケジュール
現時点で明らかになっているスケジュールは以下の通りです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年5月 | 出入国在留管理庁がJESTA導入を正式発表 |
| 2025年〜2027年 | 国会での法改正審議、システム開発 |
| 2028年度 | JESTA運用開始予定 |
政府は次期通常国会に入管法改正案を提出する方針で、法案が成立すればシステム開発が本格化する見込みです。
なお、一部報道では「2025年から試験運用開始」という情報もありますが、出入国在留管理庁の公式発表では2028年度からの導入となっています。
まとめ:JESTAは観光立国・日本の新たな一歩
JESTAの導入は、一見すると「観光客に負担を強いる制度」に見えるかもしれません。しかし、国際的な視点で見れば、主要観光国の多くがすでに同様の制度を運用しており、日本もようやく世界標準に追いつくという側面があります。
この記事のポイント
- JESTAは2028年度から導入予定の電子渡航認証制度
- 手数料は2,000円〜3,000円程度を検討中(未確定)
- アメリカのESTA(約6,000円)と比較すると安い部類
- 目的はテロ対策、不法滞在防止、入国審査の迅速化
- 他国の事例を見ると、観光客減少への影響は限定的
2030年に訪日外国人6,000万人を目指す日本にとって、JESTAは安全と利便性を両立させるための重要なインフラです。手数料の負担よりも、入国審査の短縮や災害時支援の充実など、旅行者にとってのメリットも大きいと言えるでしょう。
皆さんは、JESTAの導入についてどうお考えですか?ぜひコメント欄でご意見をお聞かせください。
参考資料
- 日本経済新聞「訪日客の事前入国審査『日本版ESTA』28年度に開始」(2025年5月23日)
- Japan Today「Japan weighs 2,000-3,000 yen fee for new pre-travel screening system」
- 日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計
- 米国税関・国境警備局(CBP)ESTA公式情報
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