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かつての大衆魚「ハタハタ」が高級魚に?価格高騰の理由と今後の展望を徹底解説

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秋田県の県魚として知られ、「秋田名物 八森ハタハタ 男鹿でオガブリコ♪」と秋田音頭にも歌われてきたハタハタ。かつては「箱代より魚の方が安い」とまで言われた庶民の味でしたが、2025年現在、その姿は一変しています。スーパーの店頭では子持ちのメス3匹で2,600円という価格がつくなど、もはや高級魚と呼んでも過言ではない状況になっています。

この記事では、ハタハタの価格高騰の背景にある深刻な不漁問題と、その原因、そして今後の展望について詳しく解説していきます。


目次

ハタハタとは?秋田県民の食文化を支えた「神の魚」

ハタハタは、スズキ目ハタハタ科に属する深海魚で、体長は20cm程度になります。漢字では「鰰」(魚へんに神)と書かれ、その名の通り「神の恵みの魚」として古くから敬われてきました。

名前の由来は「霹靂神(はたたがみ)」。これは激しく鳴り響く雷を意味する言葉で、日本海側で雪が降り始める頃、雷が鳴るタイミングでハタハタが沿岸に押し寄せてくることから、この名がつけられたとされています。別名「カミナリウオ」とも呼ばれる所以です。

ハタハタの特徴

ハタハタは深海魚であるため鱗がなく、小骨も少ないのが特徴です。身離れが良く「馬の息でも煮える」と言われるほど火の通りが早いため、調理がしやすい魚として親しまれてきました。

また、メスが抱える卵は「ブリコ」と呼ばれ、プチプチとした食感と独特の粘りが特徴で、これを目当てに子持ちのメスを求める人も多くいます。

秋田の食文化とハタハタ

秋田県民にとってハタハタは、単なる食材以上の存在でした。「ハタハタがないと正月が迎えられない」という言葉があるほど、年越し儀礼や食文化と密接に結びついています。

主な料理法としては以下のようなものがあります。

  • 塩焼き:最もシンプルな調理法。子持ちのメスは卵ごと焼いてプチプチ食感を楽しむ
  • 煮付け:甘じょっぱい味付けでご飯のおかずに最適
  • しょっつる鍋:ハタハタから作った魚醤「しょっつる」を使った郷土料理
  • ハタハタずし:なれずしの一種で、保存食としても重宝された
  • 湯上げ:山形県庄内地方の郷土料理で、茹でたハタハタに醤油をかけて食べる

特に「しょっつる」は、ベトナムのニョクマムやタイのナムプラーと並ぶ魚醤として知られ、ハタハタの旨味が凝縮された調味料です。


かつての「大衆魚」ハタハタ:箱買いが当たり前だった時代

今では高級魚の仲間入りをしているハタハタですが、昭和40年代までは信じられないほど安価で流通していました。

最盛期の漁獲量

1960年代後半、秋田県のハタハタ漁獲量は最盛期を迎えます。

  • 1966年(昭和41年):約2万1,000トンを記録
  • 1968年(昭和43年):2万223トンで全国漁獲量の5割超を占める
  • 1963年〜1975年:13年間連続で1万トン以上の漁獲量

この時代、ハタハタは秋田県の海面総漁獲量の約50%を占める最重要魚種でした。

「箱代より安い魚」の時代

最盛期には「1箱(11キロ)50〜300円、魚より箱代の方が高い」と言われるほど安価でした。一般家庭でも箱単位で購入するのが普通で、冬の初めに大量に買ったハタハタを、各家庭で塩漬けや味噌漬けにして冬の間のタンパク源として利用していました。

これは、ハタハタが秋田県民にとって「日常の魚」であり、特別な存在ではなかったことを示しています。


漁獲量激減の歴史:1976年からの急落

しかし、この豊漁期は長くは続きませんでした。

漁獲量の推移

  • 1976年(昭和51年)以降:漁獲量が急激に減少開始
  • 1979年(昭和54年):1,386トン(最盛期の約1割未満)
  • 1980年代:100トン〜300トン台で推移
  • 1991年(平成3年):わずか71トン(過去最低を記録)

この急激な減少の原因としては、乱獲が大きな要因として指摘されています。漁師たちは買い手がいなくなるまで獲り続け、傷んでしまった魚は海に捨てるということもあったといいます。

3年間の全面禁漁:画期的な決断

1991年の71トンという衝撃的な数字を受け、秋田県の漁業者は大きな決断を下しました。

1992年(平成4年)9月から1995年(平成7年)8月まで、3年間の全面禁漁を実施したのです。

これは漁業者にとって、文字通り「生活の糧を失う」決断でした。禁漁中は出稼ぎや廃業など、苦しい生活を強いられた漁師も少なくありませんでした。

県の研究機関は「中途半端な規制ではほとんど増加しないが、3年間の全面禁漁であれば2.1倍に増加する」というシミュレーション結果を示し、この決断を後押ししました。

禁漁後の回復と再度の減少

禁漁明け後、漁獲量は徐々に回復していきました。

  • 1995年:143トン(禁漁前の約2倍)
  • 2000年:1,000トン突破
  • 2004年:3,258トン(禁漁以降の最高値)
  • 2006年:漁獲量全国1位に返り咲き

しかし、この回復は長続きしませんでした。2000年代後半から再び減少に転じ、深刻な不漁が続いています。


2024年〜2025年:史上最悪の不漁

そして2024年〜2025年シーズン、ハタハタ漁は過去最悪の状況に陥っています。

2024年シーズンの漁獲量

秋田県の2024年シーズン(2024年9月〜2025年3月)の漁獲量は、わずか17トン

  • 沿岸の季節ハタハタ漁:約2トン
  • 沖合の底引き網漁と合計:約13.9トン(2025年1月時点の速報)

これは、禁漁明けの1995年以降で最低だった前シーズンの111トンをさらに8割以上も下回る、記録が残る1952年以降で最も少ない数字です。

2025年シーズンの見通し

2025年11月11日、秋田県は衝撃的な発表を行いました。

「2025年シーズン(2025年9月〜2026年6月)の漁獲量について、資源量がほとんどなく、漁獲はほぼない」

初漁予測のためのサンプル採取でも、例年取れる個体数が極端に少なく、約30匹程度しか確保できなかったといいます。県は沖合漁については費用対効果の面から他魚種を狙った操業とし、沿岸漁は資源量把握のための試験的操業を提案しています。

漁業者の悲痛な声

この未曾有の不漁は、漁業関係者の経営を直撃しています。

男鹿市の漁師からは「まとまった水揚げの日が続かず、人件費や船の修理費などで赤字だ」という声が。にかほ市の漁協関係者も「ハタハタ漁は漁業としてはもう成り立たなくなっている。漁の在り方自体を見直すべき時が来ている」と、その深刻さを訴えています。


なぜハタハタは減ったのか?考えられる原因

ハタハタ激減の原因については、様々な要因が指摘されています。

1. 海水温の上昇

県の資源対策協議会では、海水温の上昇が稚魚の成育や資源維持に悪影響を与えている可能性を指摘しています。

ハタハタは冷水を好む魚で、稚魚は14℃以上で自然死が増えるという研究結果もあります。日本近海の海水温は過去100年間でプラス1.19℃上昇しており、世界平均(プラス0.56℃)を大きく上回っています。

特に2023年8月には日本の南を中心に海面水温が過去最高を記録するなど、海洋環境の変化が顕著になっています。

2. 産卵場の減少

ハタハタは11月下旬から12月にかけて、沿岸の水深2m前後のホンダワラ類藻場に産卵します。しかし、地域によっては藻場の後退により産卵場が減少しているところもあると報告されています。

埋め立てや海洋環境の変化による藻場の減少は、ハタハタの繁殖に直接的な影響を与えている可能性があります。

3. 資源管理の課題

一部の専門家からは、資源管理の方法に課題があるとの指摘もあります。

  • 漁獲枠が実際の漁獲量より大きく設定されているケース
  • 漁獲枠をオーバーしても漁獲が続いているケース
  • 小型の若魚も含めて漁獲されている問題

これらが「成長乱獲」と「加入乱獲」の両面から資源を圧迫しているという見方です。

4. 自然変動の可能性

ハタハタは元々、30年〜50年の周期で資源量が大きく変動する魚とされています。「レジームシフト」と呼ばれる海洋環境の長期的な変動が、漁獲量に影響している可能性も指摘されています。

ただし、複合的な要因が絡み合っており、根本的な原因はまだ完全には解明されていません。


価格高騰の実態:もはや「高級魚」並みの値段に

漁獲量の激減は、当然ながら価格に反映されています。

2024年〜2025年の価格動向

2024年12月、秋田県八森港での初水揚げで、メスのハタハタにはキロあたり4,000円という価格がついたと報道されています。これはクロマグロ並みの価格です。

能代市内のスーパーでは、以下のような価格で販売されていました。

  • 子持ちメス(季節ハタハタ)3匹入り(約350g):税込約2,600円
  • オス・メス混合4匹入り(約430g):税込約2,700円
  • オスのみ数匹入り:税込1,000円以上

地元産を販売するのは約1カ月ぶりで、店舗側も「経験したことがない状況」と困惑の声を上げています。

通販サイトでの価格

2025年12月現在、男鹿の業者による通販価格では、オス・メス混合1.0〜1.2kg(8〜12匹程度)で6,480円(税込)という価格設定も見られます。これに送料を加えると、1kgあたり7,000円近くになる計算です。

消費者の反応

「手が出ない」という消費者の声が各地で聞かれます。かつては箱買いして大量に保存していた魚が、今では気軽に買える価格ではなくなってしまったのです。


二度目の禁漁はあるのか?

かつて資源回復に成功した3年間の禁漁。同じ手法は取れないのでしょうか?

禁漁に慎重な理由

現在、秋田県では禁漁に対して慎重な姿勢を取っています。その理由として、以下が挙げられています。

  1. 禁漁しても増える見込みがない
  • 前回の禁漁時とは海洋環境が大きく異なる
  • 根本的な原因が解明されていない
  1. 食文化の断絶への懸念
  • 「取らないということは食べないということ。食文化が途絶える」(地元漁師の声)
  • 前回の禁漁で若い世代の需要が落ち込んだ経験
  1. 漁業者の生活
  • 「漁師さんがいなくなって増えたって言ってもしょうがない」
  • 後継者不足がさらに深刻化する懸念

地元では「二度と禁漁はダメだ」という声が強く、それ以外の方法で県魚ハタハタを守る模索が続いています。


ハタハタの価格高騰についてどう思うか

かつて「箱代より安い」とまで言われた大衆魚が、今や高級魚並みの価格になったこの状況。これについては様々な見方ができます。

懸念される点

  1. 食文化の衰退
  • 高価格化により、若い世代がハタハタを食べる機会が減少
  • 「ハタハタずし」「しょっつる鍋」などの郷土料理が特別なものに
  1. 地域経済への影響
  • 漁業者の収入減少と後継者不足の加速
  • 関連産業(加工業、飲食業)への波及
  1. 海洋環境変化の警鐘
  • ハタハタの不漁は、日本海の生態系変化を示すサイン
  • 他の魚種にも同様の影響が及ぶ可能性

前向きに捉えられる点

  1. 資源価値の再認識
  • 安価すぎた時代には顧みられなかった資源の価値が見直される機会
  • 持続可能な漁業への意識向上
  1. 食べ方の工夫
  • 量より質を重視した消費への転換
  • 地元産を大切に味わう文化の醸成

今後に向けて

ハタハタの価格高騰は、単に「魚が高くなった」という問題ではありません。海洋環境の変化、漁業の持続可能性、食文化の継承という複合的な課題が凝縮されています。

消費者としてできることは、まずこの状況を知り、理解すること。そして、入手できた時には感謝の気持ちを持って味わうことではないでしょうか。


まとめ

  • ハタハタは秋田県の県魚で、かつては「箱代より安い」大衆魚だった
  • 1960年代の最盛期には年間2万トン超の漁獲量があった
  • 乱獲により激減し、1992年〜1995年に3年間の全面禁漁を実施
  • 一時回復したものの、2024年〜2025年は史上最悪の不漁(17トン)
  • 2025年シーズンは「漁獲ほぼない」と県が発表
  • 海水温上昇、産卵場減少、資源管理の課題など複合的な原因
  • スーパーでは子持ちメス3匹で2,600円など高級魚並みの価格に
  • 禁漁には慎重な姿勢、食文化継承との両立が課題

かつての「庶民の味」は、今や貴重な「海からの恵み」となりました。この変化を通じて、私たちは海の資源と向き合い、持続可能な形で食文化を守っていく方法を考えていく必要があるのかもしれません。


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